ガイダンスカウンセラー 歴史と実績
教職課程における「生徒指導」「進路指導」「教育相談」科目の新設
1986年1月,日本進路指導学会が文部省(当時)の福井謙一教育課程審議会会長宛に「学校における進路指導の充実に関する要望書」を建議した。その内容は進路指導の内容に子どもたちの進路に関する発達課題を設定し,主体的な進路選択の能力を育成することや,それら指導を推進するために全国の一定規模以上の学校に定員外専門職として児童・生徒の進路に関わるガイダンスカウンセリングを担当する進路指導主事を配当する事などであった。
これらの要望の多くは日の目を見なかったが,その後の教育職員免許法の改正に際して,教職専門科目の必修科目として「生徒指導」「進路指導」「教育相談」が新設されることになり,これらの要素が学校教員に求められることが明確になった点では一定の成果が見られた。
「相談指導教諭」制度案
1990年5月に日本カウンセリング学会が「学校現場において生徒指導・教育相談・学級経営などの分野で指導者的立場から指導及び助言を行えるものが設置されるべき」という考えから,日本教育心理学会・日本進路指導学会に「学校機関における『相談指導教諭(仮称)』制度新設」を呼びかけ,両学会はこれに応じた。以来3学会が連携し,実現に向け検討を行った。
1997年には文部省中学校課に「養護教諭が児童生徒の身体の擁護をつかさどるように,心の問題を担当し,また子どもたちの適応的・進路的相談指導をつかさどるもの」として「相談指導教諭(仮称)」制度の新設案を提示(1/15付)した。が,実現には至らなかった。
スクールカウンセリングに関する諸団体の動向
その他の団体でも「認定カウンセラー(1986年設立)」「キャリアカウンセラー(1992年同)」「学校カウンセラー(1995年同)」「学校心理士(1997年同)」「臨床発達心理士(2002年同)」などの資格認定が行われ,それぞれに活動していた。 これらの資格は,文部科学省(旧文部省)のスクールカウンセラー事業における任用規定では,スクールカウンセラーに「準ずる」者とされていた。そこでこれら資格の認定機関や学会の中には,文部科学省に対し,これらの資格取得者について正規のスクールカウンセラーとして扱ってほしい,「準ずる」という扱いを改善して欲しいと要請するものがあり,そのような団体が連合して活動しようとする機運もあったが,各団体の認定する資格が消滅してしまうのではないかという不安から話はまとまらなかった。
新資格「ガイダンスカウンセラー」の創設
しかし,文部科学省から「同じ考えを異なる団体が個別に訴えるのではなく,窓口が一つにならないか」という提案があった。この提案を受け,6資格の認定機関とそれを支持する学会・団体が「(各資格が相互扶助して共存する)緩やかな連合」というコンセプトを共有して,2009年に「スクールカウンセリング推進協議会」(2015年4月に一般社団法人日本スクールカウンセリング推進協議会に移行)が設立され,この連合の認定資格として「ガイダンスカウンセラー」を創設した。
発足時の構成団体は以下の通りである。「学会連合資格『学校心理士』認定運営機構」「日本学校心理士会」「日本学校教育相談学会」「日本カウンセリング学会」「日本キャリア教育学会」「日本教育カウンセリング学会」「NPO法人日本教育カウンセラー協会」「一般社団法人臨床発達心理士認定運営機構」「日本臨床発達心理士会」。