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公開シンポジウムの報告

第14回公開シンポジウム2024
ーハイブリッド型オンラインシンポジウムー
多様な子どもたちが安心して学べる学校づくりに
スクールカウンセリングはどう貢献できるか

2024年6月29日(土) 13:00~16:00
会場 御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターRoom C

 現在,貧困やヤングケアラーなど,さまざまな家庭環境の問題をかかえた子ども,あるいは発達障害の子どもや外国にルーツを持つ子どもが増え,ギフテッドや性的マイノリティの子どもたちも可視化されるようになり,学校は多様な子どもたちが学ぶ場となっています。他方、2022年度の全国の小・中学校の不登校の子どもが約29万9千人(過去最多),うち学校内外で相談・学習支援を受けていない者が約11万4千人(過去最多)と発表されています。これらの現状を踏まえて、本シンポジウムでは,多様な子どもたちが安心して学ぶことができる学校づくりのためのスクールカウンセリングのあり方について議論する場として開催されました。

 新井邦二郎氏〔前東京成徳大学学長,一般社団法人日本スクールカウンセリング推進協議会理事長〕より開会挨拶が述べられた後、川崎知己氏〔千葉商科大学教授, 一般社団法人日本スクールカウンセリング推進協議会研修委員〕の全体司会のもと、講演およびシンポジウムが進められました。

柴山昌彦氏〔衆議院議員,元文部科学大臣〕

 講演では、柴山昌彦氏〔衆議院議員,元文部科学大臣〕より「多様な子どもたちが安心して学べる学校づくり-スクールカウンセリングへの期待」と題したご講演をいただきました。いじめや不登校、自殺など子どもたちが抱えている複雑化・多様化した諸問題の現状を踏まえ、スクールカウンセラーがチーム学校の専門スタッフの一員として、児童生徒や保護者へのカウンセリングのほか、教師等と積極的に連携を図りながら、心理の専門家としてのアセスメントやコンサルテーションによる支援につなげていくことの重要性が述べられました。そして、スクールカウンセラーの配置拡大と共に、質の向上を図っていくことが求められており、ガイダンスカウンセラーによるさらなる貢献が期待されることが表明されました。

仲村健二氏〔文部科学省初等中等教育局児童生徒課生徒指導室長〕


 続いて、仲村健二氏〔文部科学省初等中等教育局児童生徒課生徒指導室長〕よりいただきました講演「多様な子どもたちが安心して学べる学校づくり」 では、児童生徒のいじめ、不登校、自殺等の諸問題の現状や、不登校の要因分析に関する調査研究の結果の概要と共に、スクールカウンセラーに求められる職務内容、チーム学校に基づくスクールカウンセラー等の効果的な活用の必要性が述べられました。そして、生徒指導提要の改訂に伴う教育相談体制のさらなる充実と共に、重層的支援構造に基づく生徒指導を進めていくことの重要性についても述べられました。
 シンポジウムでは、近藤清美氏〔帝京大学教授,一般社団法人日本スクールカウンセリング推進協議会副理事長〕を司会として、各シンポジス卜より大変貴重なご発表をいただきました。
 一色翼氏〔川口短期大学専任講師・前さいたま市公立小学校教諭〕より「子どもたちの心理的安全性を高める学級づくりの観点から-教師の挑戦を支える,保護者との間の心理的安全性を基盤として-」、仲里直美氏〔沖縄県公立中学校教諭〕より「多様な子どもたちを支援するためのチーム支援の観点から―教育相談コーディネーターとしての取り組み―」、水川和彦氏〔岐阜市教育長〕より「草潤中学校(学びの多様化学校)が提案する「選択と行動」の教育」と題したご発表をいただきました。一色先生の話題提供では、教師-保護者間で形成される心理的安全性を基盤としつつ、教師による創造的な教育実践が発揮されることで子どもたちの心理的安全性が確保された学級が実現していく可能性があること、仲里先生の話題提供では、人や情報などを一か所に集めて管理し有効活用するというエンタープライズ・リソース・プランニング (ERP)を活かしたチーム支援の考え方と実際、そして、水川先生の話題提供では、登校時間や時間割、担任の先生や学校の規則を生徒が選択したり作っていったりするなどといった草潤中学校の「学校らしくない学校」をコンセプトとした様々な教育実践について、大変重要となるお話をいただきました。そして、これらのご発表を受けて、参加者からの質問も含めて、さらなる質疑応答やディスカッションが行われました。

全体討議の様子(右より 司会:近藤清美氏,シンポジスト:一色翼氏,仲里直美氏,水川和彦氏)

 最後に、飛田浩昭氏〔西武文理大学特命教授,一般社団法人日本スクールカウンセリング推進協議会研修副委員長〕より閉会の挨拶が述べられ、盛会のうちに、本シンポジウムは終了しました。

 本シンポジウムでは、会場参加者71名、ライブ配信視聴者321名、計392名と、多くの方々にご参加いただき、終了後のアンケートでは、内容・運営ともに満足しているという回答を約95%いただいた他、実践的な内容で有意義な学びと気づきを得られる機会となった、明日からの自分の活動や実践の参考にしたい、ハイブリッド型の催しを今後も続けてほしい等の感想を多くお寄せいただきました。

 ご登壇いただきました先生方、ご参加・視聴いただきました皆様、運営に携わってくださった関係スタッフの皆様に心より感謝申し上げます。本協議会では、引き続き、スクールカウンセリングのさらなる充実を目指して、様々な企画・活動を進めていきます。〔広報委員会〕